磐城中央病院
磐城中央病院/日東病院
ウロギネ・女性排尿機能外来
ご挨拶
医師 | 野村昌良
2021年1月より福島県いわき市の磐城中央病院に女性の頻尿や尿もれなどの排尿トラブルや子宮脱、膀胱脱などの骨盤臓器脱の治療に特化した専門治療外来を開設致します。このような専門治療外来は首都圏には存在するものの、東北地方にはほとんどありませんでした。そのために女性の排尿トラブルや骨盤臓器脱の患者さんは「婦人科に行けば良いの?」「泌尿器科の方が良いの?」「どこに行けば良いの?」という悩みがつきませんでした。実際に泌尿器科や婦人科に受診しても、「うちでは専門的な治療を行っていない」といわれることも多く、思い切って受診しても患者さんにとって満足いくような治療が受けられなかったという問題をしばしば耳にします。
近年、女性の排尿トラブルや骨盤臓器脱の診断や治療は急速に進歩している分野で、これらは専門医による専門的な治療により、多くの方が治癒したり、症状を大きく改善させることができる病気なのです。したがって、このような病気で悩まれている患者さんは婦人科と泌尿器科両方のトレーニングを受けている専門の医師にかかることが勧められます。
泌尿器科は英語で「ウロロジー」、婦人科は「ギネコロジー」ということから、それら一部ずつをとって女性の排尿トラブルや骨盤臓器脱を診る分野を「ウロギネ」といいます。そしてウロギネの専門治療センターを「ウロギネセンター」といいます。今回、開設する専門治療外来は、「ウロギネセンター」という名称より、患者さんにとってよりわかりやすい名前のほうが良いとの考えから、女性の排尿という言葉を添えて「ウロギネ・女性排尿外来」と命名しました。
尿もれや骨盤臓器脱は非常に多くの受診経験のない潜在患者が存在しています。我々の調査でも20歳から60歳までの40,000人以上のインターネットによる調査で、約半数が尿もれを経験していると返答しています。またスウェーデンの疫学調査では出産した女性の44%に骨盤臓器脱を認めること、さらに米国のデータでは女性の9人に1人(約11%)が80歳までに尿もれまたは骨盤臓器脱で治療が必要になることが示されております。しかしながら尿もれや骨盤臓器脱は、現在のところ診療に関する情報が不足しており、実際これらの病気で悩む患者さんも、現在どのような状態なのか?セルフケアが可能な状態なのか?また病院に受診すべきなのか?受診するならどこの医療機関に行くべきか?治療するとしたら、どのような治療が最適か?など多様な悩みを抱えています。しかしながら、やはりどこへ行ったら良いのかわからないとか、受診するのは恥ずかしいとか、歳だから仕方ないとかで受診をためらっている方が非常に多くおられます。ウロギネ領域を専門とする医師として最も伝えたいことは、尿もれや骨盤臓器脱は適切な対処を行えば、治癒することが可能であったり、完全に治らないとしても生活に困らないレベルにすることが可能な病気であるということです。
近年、尿もれ・骨盤臓器脱の治療は非常に多様化しており、適切な治療を受けるためには、症状を把握し、正確な診断に基づいた適切な治療選択など行うことが必要です。以前、我々が行った調査においても、受診まで1年以上要した患者が67%、3年以上を要した患者が31%いました。そして、受診されなかった理由として、「どこの医療期間を受診してよいか分からなかった。」が最も多く、40%以上を占めました。これらの調査結果からもわかるように、女性の排尿トラブルや骨盤臓器脱で悩む患者さんに貢献する最もよい方法は、受診しやすい、専門治療外来を開設することだと考えました。そこで今回福島県いわき市を中心に広く泌尿器科診療を展開しているときわ会の協力を経て、福島県初のウロギネ・女性排尿外来を磐城中央病院に開設する運びとなりました。
2021年1月 野村昌良