磐城中央病院
磐城中央病院/日東病院
ウロギネ・女性排尿機能外来
骨盤臓器脱の手術
骨盤臓器脱の手術は、膣から行う方法と腹腔鏡を使ってお腹から行う手術の2種類があります。
1.膣から行う方法
○経腟メッシュ手術(TVM手術)
膣からメッシュを挿入し、臓器をハンモック状に支える手術がTVM手術です。基本的には子宮は残したまま子宮の前側や後ろ側にメッシュを挿入して、メッシュのアームを周囲の靭帯や筋膜に貫通させて固定します。膣壁を切開、剥離してメッシュを入れるだけなので、臓器を切除せず負担が少ないため、入院も短い期間で可能です。全身麻酔が不要で、腹腔鏡の手術よりも短時間で行うことが出来るメリットがあります。
当院の経腟メッシュ手術の特徴
・超音波装置を用いた手術
我々は近年超音波を用いて骨盤底領域でいろいろと新たな試みを行っており、特に骨盤臓器脱領域における超音波(エコー)を用いたナビゲーションTVM手術に力を入れております。
エコーを用いたナビゲーションTVMとは:これまでは手探り的な治療でしたが、超音波を使用することでメッシュの位置がミリ単位で調節可能となりました。また膀胱や直腸までの距離もわかるので、超音波を用いたナビゲーション法による安全かつ確実なTVM手術が可能です。上記の、超音波エコー検査機器を用い、診断補助検査や術後経過検査のみならず、術中のナビゲーションに使用しています。
日本製メッシュ(Orihime)を用いた経腟メッシュ手術:
現在は河野製作所が作成したOrihimeというメッシュを用いた経膣メッシュ手術が行われます。このOrihimeというメッシュは組織反応が少なく、しなやかで組織によくフィットします。強度も強く安定した成績が期待されます。このOrihimeメッシュは摩擦が少なく、滑りやすいという特徴がありますので、我々はCapioという特殊なデバイスで組織にしっかりと固定しております。これにより非常に高い非再発率となっております。
2.お腹から行う方法
○腹腔鏡下仙骨膣固定術(LSC手術)
腹腔鏡を使用して、お腹の中からメッシュを入れて膣に縫い付け、子宮または子宮摘出後の腟断端を吊り上げて仙骨前面の靱帯に固定する手術です。以前は開腹手術が主流でしたが、現在は体の負担が少ない腹腔鏡手術で行われています。子宮筋腫などの疾患ある人や、開脚制限などで腟からの手術ができない人でも対応が可能です。
全身麻酔のため、TVMと比べると手術時間が長くなります。また、性交渉への影響が少ないと言われ、比較的年齢の若い方に行われます。
世界で標準化されているといわれるフランスのA.Wattiezの術式に基づいて腹腔鏡下仙骨前面固定術を確立。野村医師は、北九州総合病院の新井医師とともに、西日本ではもっとも早く腹腔鏡を用いたメッシュ手術を導入し、これまでに3000例以上の腹腔鏡下仙骨腟固定術を行ってきました。
当院の腹腔鏡下仙骨膣固定術の特徴
●術後経過
翌日より食事・歩行が可能です。術後3日目に尿道カテーテルを抜去し、術後5日目以降に退院が可能です。術後2週間〜1ヶ月は重いもの(3kg以上)を持つ、長時間しゃがみこむ、激しい運動など、腹圧がかかる動作を控えて頂く必要はありますが、歩行や日常生活は通常通り行って頂いて構いません。
●メッシュ手術の合併症について
腟の裏に埋め込んだメッシュが、腟から露出してくることがあります。発生頻度は5%以下です。
この場合、露出したメッシュを切除して腟を再縫合することがあります。
●術後の尿もれについて
骨盤臓器脱の手術では、術後に尿もれが出現する場合があります。骨盤臓器脱ではもともと膀胱下垂により尿道が曲がっていることが多く、それが手術で矯正されることで腹圧性尿失禁が出現すると考えられています。多くは時間とともに軽快しますが、軽快しない場合には、尿もれの手術を行うことがあります。予防には術後の骨盤底筋体操をしっかり行うことが大切です。